御無沙汰しております。 4月あたりから色々ありましてすっかり更新が滞っておりました。 Twitterではたまに呟いておりましたが、なかなかブログにかける時間が無く、さぼりつづけて早四カ月でございます。大変にみっともない事でございました。 さてさて、ブランクの間も娘はすくすくと成長しております。 言葉の発達も目覚ましく、親とも周囲の人間とも普通にコミュニケーションが取れるようになってます。この世界に出て来て3年と少しで人間こんなに言葉が喋れるようになるもんだ、ということに驚き、もうじき米国生活が6年にもなろうというのにこも体たらくは何だい、と己の英語力に呆れる日々です。いっつも同じこと書いてるような気もしますが。そしてこれからも書くでしょうが。 娘の言語能力に話を戻すと、娘は昼間英語の環境、家に帰ってからは基本日本語の生活を送っています。一昔前までは、初手から多言語の環境に子供を置くのは良くない、なんて事も言われてましたが、最近の研究によれば子供の脳味噌というのはもっと良くできていて、そんなに簡単には混乱しないそうです。 例えて言うならば、冷蔵庫に入ってる林檎と蜜柑を区別するくらいの難易度だそうで。つまりたまに林檎のつもりで蜜柑を取ってしまうことがあっても、すぐに気づけるくらいのものとのこと。この喩えがどこまで上手いのはかともかく、まぁそれほど心配する事はない模様。確かに娘をみていると、相手や周囲の状況によって日英を使い分けているので、そんなもんかもしれません。 ただし、やはり他のモノリンガル、つまり英語しか話してない子供に比べると、娘の言葉は少し遅いところがありますが、それは仕方がないかと思ってます。時間が解決してくれるでしょう。多分。 そんなある日のこと。 最近色について語彙が増えてきた娘は、何かと言えば色の名前を叫びます。 絵本を見ながら、親が指差す物の色を口に出しては嬉しそう。 「これは?」 「Blue!」 「じゃあこれは?」 「Orange!」 「これは?」 「Pink!I love pink!」 「そうだね~。じゃあこれは?」 「Yellow Chinese!」 ん?今なんて言った? 「ケメ、もう一回言って見て。これは何色?」 何か違う色でも言ったのかと思ったらしき娘は、若干自信がなさそうに繰り返します。 「Yellow……Chinese」 なんで黄色い中国人が出てくるんだ。てかどこでそんな言葉を仕入れてきた。 とりあえず娘のデータベースから不穏な言葉を取り除かなければ。 「ケメ、Chineseはいらないんだ。俺たちはYellow Japanese、いやそういう事じゃない。Yellow、Yellow。Yellowって言ってご覧」 「Yellow!」 「よしよし。じゃあこれは?」 「Red!」 「じゃあこれは?」 「Purple!」 「じゃあこれ」 「Yellow Chinese!」 「だぁ!違う!」 「…Chinese Yellow!」 「そういうことじゃない!」 娘の頭にはすっかり黄色=Yellow Chineseという、あまり政治的に正しくないフレーズが染み付いているらしく、訂正作業は上手く行きません。 それにしても気になるのは、この言葉を娘はどこで覚えたか、ということ。いくら口の悪い私達夫婦でも、黄色い中国人なんて事は口にしません。どんな文脈だよ。 考えられるソースとしてはたった2つ。デイケアの先生か、クラスメイトです。 まずデイケアの先生というケースですが、これは正直考えにくい。様々な人種の子供が通う娘のデイケアでは、こういう人種差別とも取られかねない発言には充分気を使ってるはず。可能性としては限りなく薄い。 次にクラスメイト。今の娘のクラスメイトはざっくり言って、アングロサクソンが6割、インド系を含むアジア系が3割、アフリカ系が1割と言った感じ。全ての親を知ってるわけじゃありませんが、あんまり偏った人はいないはず。多分。きっと。おそらく。 ただそこで気になるのは、アメリカ人の中には差別意識のないままにそういうことを子供に教えてしまうような人もいるということ。 このエントリーの最初に引用した歌も、一昔前のアメリカでは良く歌われていたようですし、いまだに無邪気かつ無自覚に子供に教えてしまってる人もいるみたいです。 娘がYellow Chineseと呼ばれたりしてたということなら、これは厳重に注意しなければいけません。Yellow Japaneseの誇りにかけて。いや違うか。 妻と善後策を協議し、これはやっぱりデイケアの先生に聞くしかなかろう、ということになりました。しかし何かの間違いということもあるので、慎重に対応しなければ。 ということで、妻がそれとなく話をしたところ、デイケアのディレクターが強い関心をもったらしく、調べてくれることになりました。 そして数日後、娘の担任の先生から意外な真相が。 娘のクラスで習う、色の種類を憶えるための歌がその原因だった模様。 もちろん、Yellow Chineseなんて言葉は出てきません。 正確な歌詞は Shining Yellow=シャイニング イエロー でした。 想像ですが、おそらく娘のボキャブラリーにShinig というのが無かったためか、娘は既に知っているChineseで代用したのでしょう。順番が入れ替わった理由は分かりませんが、何となく理屈は通ります。 ああ良かった。変な心配をして損した。そしてなにより、変に事を荒立てなくて良かった、とホッとする私達夫婦。 最初に娘の口からYellow Chineseという言葉を聞いた時にはぎょっとしましたが、分かってみれば大した話じゃありませんでした。親の方が神経質すぎたのでしょうかね。 私達夫婦はこれまでのアメリカ生活で特にひどい差別を受けた経験はありません。ですが、きっと心のどこかでそういうことが起こる日のことを恐れていて、今回の娘の発言が私達の深層心理を刺激したのでしょう。 とりあえず、今回のことはちょっとした笑い話ということで終わりました。いやーびっくりした。 後日、私が娘のお迎えに行った時に出会った先生にその話題を振りました。いやー聞いたでしょ?娘がYellow Chineseとか言うから仰天したよー。 するとその先生、娘のお気に入りのインド系の女性ですが、いつものようにちょと訛った英語でこう答えてくれました。 「そうそう!私も驚いちゃった!だって歌でチャイニン イエローって言ってるのに、チャイニーズイエローになっちゃうんだからね!チャイニンとチャイニーズがまざっちゃったのね!」 先生の口からでるShiningという単語は、私の耳にもしっかりとChinigと聞こえるものでした。 先生、それ俺でも聞き間違えますよ。 ではまた。 |
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