ルームメイトの弟であり、私がシェアしている部屋の家主でもあるBは二匹の雄猫を飼っている。
彼は大手の設計事務所に勤めるインテリアデザイナーで、全米を飛び回ってため、出張のたびにRに猫を預けていく。 つまり、その間、私はRだけでなく、二匹の猫ともルームシェアをすることになる。 言い忘れたが、私は猫が大好き。いつか猫を飼いたいと思っていたが、こんな形でそれが叶うとは。 そんなわけで、先週から二匹の猫と過ごす日々。 セバスチャンは白と茶色。オニキスは黒。 「セバスチャンというのは日本語では執事を意味するのだよ。」とルームメイトのRに教えたところ、いたく感心してもらえた。 Rよ、ごめん。ちょっと嘘だ。 セバスチャンは恐ろしいほど人懐っこく、滞在2日目からは私に擦り寄り、指の臭いを嗅ぎ、床に転がっては私を誘惑する。 オニキスはというと、性格は正反対で、まったく懐かない。Rですら半年かかって、やっと撫でられるようになったという。 彼らが滞在中、私は夜になるときまって片手に梱包用のゴムを改造した「釣竿」を持ち、それで猫を釣りながらリーディングをしている。 私が釣竿を放るたび、セバスチャンは重そうな身体をあっちこっちに飛ばしながら食いついていく。 上手い具合に釣竿の先を捕まえると、セバスチャンはカリカリとすっかりゴムがほつれたゴムをかじる。 オニキスは遠くから興味がなさそうにこちらを眺めているが、それでも釣竿が振られるたびに一瞬反応しそうになっているのが分かる。お、気になるの?と話しかけると、別に、に言わんばかりにそっぽを向く。ツンデレか。ツンデレって奴か。可愛いのう。 セバスチャンは釣られ飽きると、尻尾を直立させたまま、ソファーに座る私の足に身体をゾリリっと擦り付け、今度は撫でるように要求する。 シカゴの乾燥した冬は、セバスチャンの毛皮を撫でるたびにパチパチと静電気を走らせる。しかし、それが痛くないのか、セバスチャンはグフグフといいながら、ゴロゴロ転がり満遍なく撫でるように私に要求し続ける。デレデレか。デレデレって奴か。可愛いのう。 あああ至福。この二匹、客観的に観ればあんまり可愛くないが、今この瞬間だけを切り取るならば、本当に君達は可愛い。僕と君達との関係性においてのみだが、本当に愛くるしい。 当初、リーディングで一章読み終わるたびに釣竿を振っていたが、いつの間にかそれが一段落ごとになり、そのうちリーディングはテーブルに放置され、深夜2時過ぎに釣竿を振り続ける私がいた。 なんて素敵な生活。 私の人生で初めての猫と過ごす時間。そのトイレの臭さには閉口したが、家に猫がいる風景って素晴らしい。 先日のこと。 幼い頃から犬と生活をしていて、根っからの犬好きである妻に、猫がどんなに可愛いかを電話で力説する私。 「ねこにゃんは可愛いねぇ。ねこにゃんがお家にいるっていいねぇ」 傍から見たら脳みそがとろけたような物言いだが、日本語だから妻以外には理解できない。 「でもさー。私、犬派って知ってるでしょう?」 「いやいやいやそれは誤解だよ。ねこにゃんは可愛いよ。人として生まれたら飼うべきだよ。いつか。」 「だって猫って●●じゃない」 「な、なんてことを言うんだ君は!ねこにゃんのどこが●●だと言うのだ!」 「猫ねぇ・・・やっぱり飼うなら犬がいいよ。人の最良のパートナーだよ。」 「その基準が分からんが、もし猫の●が●●だというなら、犬のあの濡れた鼻だって・・・ちょっと待った。・・・にゃーにゃーにゃーにゃー!」 「・・・何?いま何語?誰に向かって喋ったの?」 「いや失礼。ちょっとセバスチャンが俺のワードローブに入ったので、出て行ってもらうようにお願いしたのよ」 「ちょっとあなた大丈夫?いきなり何を喋り始めたのかと思った。・・・まぁどうしてもと言うなら、飼っても良いけど、大変だと思うよ」 「なんで?世話ならきちんと僕がするから!トイレも片付けるから!」 まるで小学生が、拾った動物を飼いたいと母親を説得してるようだな、と30代も半ばに近づいた私は頭の隅で思う。 「いや、世話もそうだけど、もし飼うなら、住むところから探さなきゃいけないじゃない?大変だよやっぱり」 「え、なんで。いまシアトルで借りてるところはペットOKじゃないか。」 「だからさ。なんで私が猫と一緒に住まなきゃいけないの。どうしても猫と住みたいなら別居してもらうことなるね」 なんてひどい。 「君は本気でそんなことを言っているのか」 「まーご存知のように、私いま世帯主だから。世帯主としては、猫が我が家に入るのを許可することは出来ないね」 世帯主・・・確かに、それを言われるとグウの音も出ない。でも、こんなにねこにゃんは可愛いのに。たった今だって、こちらをしどけなく見つめているのに。 誰か、こんな妻を説得する方法を教えてください。 この会話以降、毎晩々々、釣竿を振りながら、妻をどう説得すれば良いのか考えてますが、ねこにゃんにアタマをヤラレタボクはキチンとモノゴトヲカンガエルコトがデキマセン。 カーイイナーカーイイナーネコニャンカーイーナー。 デハマタ。 追記 ある方から、一部の表記が不適切との指摘がありましたので、伏字にしました。妻は決して猫が嫌いなわけではありません。犬の方が好きなだけです。 |
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あなたが猫好きとは・・・
初めて知りました。 うーん猫か・・・ダメだな 犬はやっとなれましたが「可愛い可愛い ![]() 猫好きだったの?!
知らなかった。。 実家に10匹いる猫半分あげるのに・・・ ちなみにうちの旦那も猫ギライ。 ですが、両親が海外旅行にいっている間に 預かっている猫をすごくかわいがっている。 勝手につれてきちゃえばかわいがるのではー?w >村民様
初めて知りましたって本当ですか。あらあら。実はそうなんです。 逆に村民様が犬派だということも知りませんでした。・・・って犬も好きってわけじゃないのね。動物全般駄目だったっけ? 私は、生活に動物がいると生活が潤うよなぁと思う日々です。 >あんどゅさん。
>猫好きだったの?! >知らなかった。。 あれれ?そうだっけ?言った事なかったっけ?上の村民さんと同様、意外に自分の属性って知られて無いもんだなと思ったり。 猫10匹ってのも凄いね。さすがにそれだけいると、なんだか日常生活に支障をきたしそうな感じがする。 ちなみに、とりあえず飼っちゃえば大丈夫♪ってのは、他の猫好きの人からも同じようなアドバイスを受けますが、多分駄目。きっと駄目。世界平和と同じくらい、そこには深い断絶があると思う。 その昔、友人に頼まれて、自分の庭に猫捨てて飼ったmimiです。
猫嫌いだった母が、とたんに猫好きになりまして・・・家の中が猫GOODSで溢れ返る様になりました。 私は、犬も猫も飼いたいですが、奥様はきっとわかってくれると思います。猫って可愛いですよ♪試して御覧なさいませ。 猫好きだったの?
私も知らなかった! うちのマンションはペット不可だけど、大家さんは猫を4匹飼ってて、中庭を優雅に散歩する彼らのおかげで住民間のコミュニケーションも生まれてます。 ムスメが初めて認識した動物も猫。 ま、私は犬派だけどにゃー! 猫嫌いの配偶者に猫を飼ってもらう方法は、以下の二つを守ることです。
1 食事、トイレの始末、病院通いなど、すべての猫の世話を担当する。 2 1にかかる費用のすべてを負担する。 3 猫によって破損、変質した家具や小物などの弁償・補修費用についても全額を負担する。 我が家は夫にこの二つを守ってもらうことで猫を飼うことを許可しましたよ♪健闘を祈ります。人は変わりますよ。 >mimiさん
ネコを自分の家の庭に捨てて飼うってのは、発想の転換ですね。なんとかして生活圏内に忍び込ませることができれば・・・。妻の心がネコの魅力で溶けると良いんですがねぇ。 >次姉上
てか家族の中で何気に少数派だったのが驚き。そういえば大きいペットには縁のない生活でした。 大家はネコ飼ってよいのに、店子は駄目なんだ。それもどうよって気もするけど、住人のコミュニケーション向上に繋がるなら良いのかもね。姪がひっかかれたり、逆に姪が猫を振り回したりしないように祈ってます。 >ななこ先生
ご教授有難うございました。でも先生、2つと言ってる割に3つルールがあるような気がするんですが・・・いやすみません口答えする気では。 夫婦間だというのに、厳しい条件ですね。特に3つめの部分が恐ろしい。自分が引き起こす損害にすら責任が持てないのに、猫の分もですかそうですか。 ロジックは分かりました。。。実際、どれくらい守れば良いんでしょうか?(←失言) 送信してみて気づいたのですが、修正できませんでした・・・。今度ご教示くださいませ。
どのくらいって・・・全部ですよ、全部! >ななこさん
コメント欄の修正は少し不具合があるのか、上手くいったりいかなかったりしますね。。。すみません。 管理者権限なら修正が出来ると思いますが、せっかくなのでそのまま放置することにします。けけけ。 >全部ですよ、全部! て軽く仰いますが。そんな子育てに協力しない亭主関白みたいな態度は如何かと。 ちなみに良く考えてみたら、現在妻の収入に頼りっきりの私に、先の提案は墓穴なのではないかということに気づきました。主夫にも甘えは禁物ということですかね。 |
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