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元に戻す、その前に。
ウォッチメンも日本で公開され、色々な感想が出ているようですが、まぁ予想通りというかなんというか、好きな人と嫌いな人に結構、綺麗に分かれている感じですね。

なんであれ物事には「合う・合わない」って言うのがあるので、ウォッチメンが合わない人っていうのがいるのも良く分かります。

ただ、一部に「分からないから、詰まらない」というのもあって、それはちょっと待ってくれ、と言いたくなったり。

「合わないから、詰まらなかった」と言うなら良いんですが、「わからなかった」というのから、即「詰まらない」と言い切ってしまうのは、なんというか自分の脳みそ、は言いすぎか、知的好奇心の足りなさを露呈しているだけに見えてしまったり。

偉そうなこと言ってるけど、社会の窓開いてますよ、みたいな。

まぁ人それぞれなんでね。別に全ての人がウォッチメンに興味をもつべきだ!と力むつもりはありません。世の中にはもっと大事jなことがあるしね。

でもなぁ・・・そういう方には筒井康隆の「読者罵倒」とか読んで欲しい。いや悪気はないです。ないけどね。まぁいいや。

あと、これまでネットで見た範囲ですが、日本の映画評論家できちんとしたレビューを書いている人がほとんどいない印象を受けました。

気になったのをちょっと挙げると、

ネットで有名な某映画評論家の前田有一氏は、

>この映画版は、原作に驚くほど忠実に作られているが、ここであえて私は断言する。
>この映画の完成度は、原作を超えている、と。

それはなんつーか、「あなた原作ちゃんと読んでないだろう」と思ったり。

コミックである原作と、今回の映画版、元から媒体が違うものを、一体どんなものさしで、どうやって比較した上で「超えた」と言ってんだか氏の感想ではさっぱり分かりませんが、勇み足って奴でしょうかねそうですかね。

他の映画評論家では、岡本太陽氏は、

>冷戦の話はいまさらピンと来ないし、例えば原作とは異なるが現代を舞台にして、ブッシュが
>第3期大統領を務める世界を描き、核戦争危機を背景にした映画でも良かったのではないだろ
>うか。

と書いてましたが、うーむ。製作側がそういうことを考え始めると、以前のエントリで紹介したようになるんじゃないかと思ったり。

特に、ウォッチメンみたいに、テーマと時代背景が密接に組み合わさってるような作品の場合、そういう余計な改変がどれくらい致命的になるか分かりそうなもんですけども。

大体、たとえ話にしても、ブッシュが三期大統領を務めたぐらいで、核戦争の危機がどれくらい「ピンと」くるようになるのでしょうかね。よく分かりません。

・・・また熱くなってきたので、ここらへんで止めときます。

ああでもこれだけは書きたい。上記のお二方よりも段違いに酷いのは、映画ライターの福本次郎氏のレビュー。

この方に比べたら、前田氏なんてまだまし。岡本氏なんて立派なものです。

そもそも、わざとやってんのか?というくらいに映画の内容が分かってません。

>米ソ冷戦を和平に持ち込むにあたって、エイドリアンという「天才」とDrマンハッタンという
>「神」が主導権争いをしていたというオチ。

・・・そんな話じゃねえよ!

いやつい言葉が悪くなってしまいました。でも、本当に何を観たんでしょうか?大丈夫?それ私が観たのと同じ映画ですか?

こんなに映画が理解できてなくて、よくまあ映画批評家だかの看板下げていられるのかが不思議です。本当にびっくりしました。

まぁそんなわけで。

ってどんなわけでもありませんが、しばらくウォッチメンづいていたこのブログ、とりあえず元のペースに戻そうと思います。

次回ウォッチメンで何か書くとしたら、噂のディレクターズカットが出てきたときでしょうか。

ではまた。
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【2009/04/07 13:42】 | 布教活動 | トラックバック(0) | コメント(4) | page top↑
ウォッチメンに登場するスーパーヒーローの元ネタについて調べてみた。
壁に注目


ウォッチメン映画版脚本の変更前と変更後についてのエントリを書いたところ、幸いにも色々なところでリンクを貼っていただいたようで、沢山の方々に来て頂きました。

日本でもウォッチメンの映画版に対する期待が高いようで、原作の(にわか)ファンとしても嬉しい限りです。

そんなわけで、感謝の気持ちも込めて、今日はウォッチメンに登場するスーパーヒーローのネタ元について書いてみようと思ったり。

有名な話なので知ってる人も多いとは思いますが。

そして、ひょっとしたら日本語版コミックや映画のパンフレットなんかで書いてあることばかりかもしれませんが、アメリカに住む身の辛さ、そこらへんの事情が良く分からないので、そのまま書いてみます。

※上の画像は先日放送されたサウスパークから。この日のエピソードはウォッチメンとかバットマンダークナイト、あと公開が近いザ・スピリットのパロディでした。




ウォッチメンという作品を語るにあたって、よく言われるのは「アメリカンヒーローの脱構築を目指した」ということです。

脱構築ってことは、その元が無いといけないわけで、ウォッチメンのヒーローにもそれぞれモデルというのが存在します。

モデルというとちょっと誤解を招きそうなのですが、そもそもウォッチメンはチャールトンコミックという出版社が持っていたキャラクターを「そのまま」使って作られるはずでした。

遡って話をすれば、チャールトンコミックの経営が悪化したために、キャラクターのライセンスをDCコミックが買ったので、そのキャラクターを使ってアラン・ムーア(ウォッチメンの原作者)が考えたのが「ウォッチメン」の始まりだったわけです。

しかしながら、アラン・ムーアのアイデアを聞いたDCコミック側からチャールトンコミックのキャラクターではなく、オリジナルキャラクターでやったらどうかということになり、「ウォッチメン」になったわけです。

なぜチャールトンコミックのキャラクターをDCコミックは使わせなかったのか?

これについては諸説あるものの、DCコミック側としてはこれらのキャラクターを将来的に使っていこうという意図があり、「ウォッチメン」のような一つの物語として完結してしまうストーリーに使われたくなかったというのがどうやらその理由のようです。

実際、チャールトンコミックのキャラクターは「ウォッチメン」出版以後DCコミック版としてリニューアルされて色々な作品が出ていますし、さっきTVをつけたらロールシャッハのモデル、「ザ・クエスチョン」がバットマンとアニメで仲良く競演していたので、この説はそこそこ信憑性があるのでしょう。

それでは、ウォッチメンのキャラクターの元ネタについてご紹介いたします。

各ヒーローの説明については、wikipediaその他から色々引っ張ってみました。

画像についても方々から持ってきていますが、フェアユースとして認識して頂ければ幸いです。

いつもながら誤解、誤訳などの指摘は大歓迎。ネットのCollective Intelligence頼みです。

あと、それぞれのキャラクターはDCコミック版になってからも活躍しているため、設定や見た目、ストーリーが変わってるのもいますが、このエントリではチャールトンコミック版を基本にしています。

それでは、ウォッチメン原作の登場順にご紹介。




コメディアン=ピースメーカー(Peace Maker)

comedian

ウォッチメンの中で、ある意味最も複雑なキャラクターであるコメディアン(上の画像)。彼の元ネタはピースメーカーというキャラクターです。

ピースメーカーの正体は外交官クリストファー・スミス(Christoper Smith)。こんな人です。
peace maker


元の絵を見ると全然違うじゃん!という声が聞こえてきそうですが、彼のキャッチコピーを知ればコメディアンとの類似性に気がつくでしょう。

ピースメーカーのキャッチフレーズとは、

"A man who loves peace so much that he is willing to fight for it!"

意訳すれば、

「彼は平和を愛する男。平和のためには喜んで戦う!」

なんだか「健康のためには死んでもいい」と同じくらいふざけた話ですが、実際メンタル面もかなり問題があり、その暴力的な志向には、ナチとしてユダヤ人虐殺に加担していた父親に対する恥の気持ちが大いに影響を与えているということで、暴力衝動過多なキャラクターのようです。

それだけではなく、イラストにもある妙ちきりんなヘルメットにはこれまでに彼が殺した、もしくは巻き添えになって死んだ人間の霊が篭っており、時折彼にアドバイスやコメントをしてくれると言う設定だそうで。

・・・なんだか全然ヒーローじゃない気がしてきた。電波系だ。

「平和」のためには人殺しを全く躊躇わないとか、アメリカ政府の下で特殊部隊としてテロリストを追い詰める仕事をしていたりするあたり、コメディアンの造形にも非常に共通するものを持ってますね。


ロールシャッハ=ザ・クエスチョン(The Question)

rorshach

我らが(笑)ロールシャッハ(上の画像)、なんだかんだ言って作品中、一番人気のあるキャラクターだと思いますが、ネタ元はザ・クエスチョン。見た目はこんな感じ。

the question


まんまですね。

スパイダーマンの作者としても知られるスティーブ・ディッコ(Steve Ditko)が創造したキャラクターで、後述しますがナイトアウルのネタ元、ブルービートルの作品に登場したのが初めてだそうです。

その正体はTVジャーナリストのヴィクター・セイジ(Victor Sage)。「顔なしマスク」に見えるのは元々医療用に開発された特殊な人工皮膚で、傷口につけると有毒という致命的な欠陥があるため開発が中止されたという物騒な代物ですが、かぶっても呼吸や視界をさまたげず、様々な変装に使うことが出来るものだそうです。

彼は哲学の客観主義(主観を排し、真理・価値・規範の存在を主張する哲学)をモットーとしており、社会の腐敗は絶対に許さず、悪人に対しても決して容赦をしないというのが特徴。ちなみに得意なことは調査と格闘。

その見た目だけではなく、悪に対しては絶対に妥協しないというところも、ロールシャッハに影響を与えてるのでしょう。

上述のごとく、ザ・クエスチョンは今でも元気に活躍してますが、哲学的には「禅」よりになってるようです。・・・禅問答をするロールシャッハってのも面白そうですね。間違ったら小指を折られそうで。

余談ですが、このクエスチョンのマスクをコスプレで使うための指南をしているサイトを見つけたのでリンクを貼ってみます。

アメリカのオタクも熱い。

ナイトオウル二世=二代目ブルービートル(Blue Beetle)

Niteowl-ii

映画版ではバットマンチックに格好良くなったナイトオウルですが、個人的には原作の中年太りっぽい方が好きです。

そんなナイトオウル、バットマンみたいな見かけとは裏腹に、元ネタはブルービートルと言われています。

blue_beetle_the_second

ナイトオウル二世と二代目ブルービートルの共通点としては、まずは両者とも先代がいて、その後継者であるということでしょう。そして初代ブルービートルの正体が警官であったことも初代ナイトオウルと同じですね。

二代目ブルービートルの正体はテッド・コード(Ted Kord)という天才的発明家。

スコープとか防護スーツなどの様々なガジェットを開発していたり、明らかにナイトアウルのアウルシップがモデルにしたであろう、"Bug"というエアシップ(上の画像でも写ってます)に乗ってることなんかもナイトオウルと共通しています。

Dr. マンハッタン=キャプテン アトム(Captain Atom)

drmanhattan

映画史に残るブラブラとして存在感とか色んなものを出しまくってるDr.マンハッタン。

彼の元ネタはキャプテン アトムと言います。

キャプテンアトムの正体はアレン・アダム(Allen Adam)という科学者。

captain_atom

彼がヒーローになったきっかけというのは、誤って閉じ込められてしまった実験用ロケットが大気圏で爆発したこと。

そのために一度は原子レベルまでバラバラになったのですが、再構成されてスーパーパワーを得たそうです・・・って自分で書いてて意味が良く分かりませんが、まぁそういう人だそうです。

彼のスーパーパワーとは、決して傷つくことがなく、呼吸すら必要じゃないので宇宙空間でも活動可能。空も飛べる上に意志の力で無尽蔵のエネルギーを操作できるという最強っぷりです。

当時、アメリカ人が原子力エネルギー(っていうか原子爆弾)に寄せる期待が擬人化したようなキャラクターと言えます。

見た目は随分と違いますが、Dr.マンハッタンとキャプテンアトムは成り立ちや能力についてはそのままですね。冷戦下で活躍したと言うのも一緒です。

ちなみにそのコスチュームは自分の体が発する放射能を周囲の人間から守る効果があるそうで、ここらへんの気遣いがDr.マンハッタンにあったら「ウォッチメン」ももう少し話が変わってきたことでしょう。

余談ですが、Dr.マンハッタンとキャプテンアトムの大きな相違点としては、Dr.マンハッタンが四次元で物事を認識しているということが挙げられます。

話が長くなるので割愛しますが、明らかにこれはSF作家カート・ヴォネガットの「スローターハウス5」に出てくるトラルファマドール星人からインスパイアされたんだと思います。

トラルファマドール星人
<トラルファマドール星人>

「ウォッチメン」を読むなり観るなりして「Dr.マンハッタンは神様みたいな能力を持ってくるくせに、いまいち使えねえ」と思った方は、「スローターハウス5」を読むとそこらへんの理由というか、感覚が掴めるんではないでしょうか。

実際、原作者アラン・ムーアの他の作品には、まんまトラルファマドール星人というキャラクターが出てくるようですし、少なくともアラン・ムーアがヴォネガットを読んでることは間違いありません。

なお、このキャプテンアトムも後にDCシリーズで登場してますが、逆インスパイアということで見た目が全然変わってます。

captain_atom_new

こんな感じ。どうみてもDr.マンハッタンです。ありがとうございました。

シルクスペクトラ=ナイトシェイド(Night Shade)

silkspectra

ナイトシェイドはキャプテンアトム(Dr.マンハッタンの元ネタ)のパートナーで、本名はイヴ・エデン(Eve Eden)。

私生活でもしばらくの間キャプテンアトムの恋人でした・・・ってこれはほぼDR.マンハッタンとシルクスペクトラの関係そのままですね。本当はブロンドですが、変身時には黒髪のカツラを着用。敬虔なキリスト教徒。母親は異次元から来たそうです。

nightshade

ただし、アラン・ムーアがあるインタビューで言ってるのですが、このシルクスペクトラ=ナイトシェイドというのはほとんど思い入れがなく、女性キャラを一人くらい入れとかないとね、という程度で作ったものだったそうです。

なので説明はこれくらいで終了(おい)

オジマンディアス=サンダーボルト(The Thunderbolt)

Ozimandias

映画版では随分と優男になってましたが、原作ではいわゆるアメコミのイイ男っぽい見た目のオジマンディアス。

彼の元ネタはサンダーボルトと言います。

the_thunderbolt

サンダーボルトことピーター・キャノン(Peter Cannon)の両親は、アメリカの医師団としてチベットにやってきたものの黒死病に倒れ、残された彼は寺院で孤児として育てられました。完璧に鍛え上げられた肉体と強靭な精神を持つだけでなく、厳しい修行の末、脳のパフォーマンスを100%発揮することすらできるそうです。さらには古代から伝わる智恵も強力な武器だそうで。

私が悪人だったら全然勝てそうな気がしません。

完璧に鍛えられ、かつ調和した、肉体と精神と知能の持ち主。脳の潜在能力を100%まで発揮している男。そんなところがオジマンディアスそのものでしょう。

余談ですが、この赤と黒のコスチュームは寺院での修行用の衣装だそうです。ここらへんチベットの人たちは怒っても良いと思います。

更に余談ですが、ウォッチメンの中でオジマンディアスは、MATRIXのキアヌリーブスも仰天するようなやりかたで拳銃の弾に立ち向かいます。

それについては映画を観た人の中でも「あれは一体どういう仕組みなんだ?」と話題になってるようですが、アラン・ムーアのインタビューの中にその答えがありました。以下ネタバレとも取れるので白字にしてます。

ちなみにここらへんのネタ元はこちら。

インタビューの中で、銃弾を素手でキャッチするシーンについての話題が出たとき、アランムーアは「あれは可能だと思う」と言いきってます。

というのも、そもそも原作第5章、有名な見開きシンメトリーのシーンで、オジマンディアスは重そうな灰皿を持ち上げ、拳銃の弾をその弾道を予測した上で防いだ後に、暴漢をぶん殴っているんですが、アラン・ムーア曰く、そこまでの動きをオジマンディアスは2秒でやってのけてるそうで。

そんなことが出来る人間だから、銃弾を素手を受け止めることだって可能だと。

ウォッチメンのイラストを担当したデイブ・ギボンズは、その後に「まあ彼は金属製の鎧を着てるから、失敗しても大丈夫だったんじゃない?」とか言ってますが、あくまでアラン・ムーア御大は重ねて

「いや彼みたいに完璧な肉体を持ち、精神と肉体が調和していれば(銃弾を素手で受け止めるのも)可能なんだと思う」

と主張してます。

どうやら本気の模様。

流石"The idea is bullet-proof"(「弾丸で理念は殺せない)とVフォーヴェンデッタで主人公に言わせた人なだけはあります。

人間の可能性を信じるアラン・ムーアの熱い気持ちが伝わってきますね。・・・誰だ中二病なんて言う人は。

ここでひらめいたのですが、もしかしたらオジマンディアスのモデルはサンダーボルトじゃなくて、範馬勇次郎だったんではないでしょうか。

おお。そう考えると何もかも納得いきます。

いかないか。

でもきっとアラン・ムーアと板垣恵介は話が合うと思う。この部分に関してだけは。




ということで、だだだっと語ってきましたが、お楽しみ頂けたでしょうか。乱文失礼。

まぁ結局、こういうモデルの存在について知ってようがいまいが、「ウォッチメン」を楽しむにはさほど影響は無いでしょう。

ただ、少なくとも「ああ、ウォッチメン?Dr.マンハッタンはスーパーマンのパロディで、ナイトオウルはバットマンのパロディだよね?」とかあっさり言ってのける友達がいたら、親切に教えてあげると良いかもしれません。

とはいえ、相手が彼女や奥さんだったら、こんな話をしても全然盛り上がらないと思うのでお薦めしません。念のため。

長文に付き合って頂き、ありがとうございました。

ではまた。
【2009/03/31 17:33】 | 布教活動 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
ウォッチメン映画版について文句を言う前に、原作ファンが知っておくと良い(かも知れない)こと。
タイトル長くてごめんなさい。

simpsonmen


実は、このあいだ書いたウォッチメン映画版の感想では、当初はもっと文句を書こうと思っていました。あれが違うとか、これが余計だとか。

ところが、あるブログでザック・スナイダーが監督でなければ、とんでもない映画になる可能性が高かったと知りました。

そこに書かれていたのは、ザック・スナイダーが監督として変更する前のものと、変更した後の項目を並べたリストなのですが、これを見るとザック・スナイダーをけなすどころか、彼の功績を絶賛したくなったので、感想の中の文句はばっさり切ったわけです。

と言うわけで、他の原作ファンの方にも、映画版の文句を言う前にちょっと読んで欲しいと思ったので、その内容を駄訳して以下に転載します。

いつもより駄訳度が増してると思いますので、誤訳の指摘は大歓迎。

注意:一部ネタバレ全開です。恐れない人は白地反転でどうぞ。




スナイダーによる変更前のシナリオ

・時代設定は2005年。(訳者注:いきなり吹いた)

・コメディアンとDr.マンハッタンはオサマ・ビン・ラディンを追跡している。(訳者注:意味が分からない)

・モスマン、キャプテンメトロポリス、シルエット、フーデッド・ジャスティス、二人のバーニー、その他沢山の脇役は登場しない。

・サリー・ジュピターが暴行されかけた時、助けにはいるのはホリス・メイソン(訳者注:初代ナイトアウル・・・なぜ?)

・全キャラクターに新しい台詞が書かれている。それぞれは無茶苦茶に改悪されている。ロールシャッハが完全文で喋ったりする。(訳者注:原作が今手元にないので確認できませんが、ロールシャッハって完全文で喋ってないんでしたっけ?ヨーダ?あれは倒置か。)

・コメディアンの葬儀におけるフラッシュバックシーンは無し。火星でのマンハッタンのフラッシュバックもなし。ロールシャッハのセラピー場面でのフラッシュバックもなし。実は脚本に書かれていたものの、ワーナーが削除した。(スナイダー監督曰く、彼に対してもワーナーはこれらのシーンを外させようとしたらしい)

・ローリーはスリングショットと呼ばれており、マンハッタンからスーパーパワーを貰ったことになってる。(訳者注:何がしたいんだ)

・Dr.マンハッタン、正確に言えばジョン・オスターマンは黒人になるはずだった。(訳者注:黒人受けを狙ったんだとしたら無謀だと思う)

・二人のバーニーが登場しないので、Tales of the Black Freighter もなし。

・舞台の時間軸を変更したため、プロットは穴だらけになっていた。(訳者注:それはそうだろう)

・ブバスティスは登場しない。

エイリアンの代わりに、偽Dr.マンハッタンの変なナレーション付で偽装攻撃が行われる。カルナック(訳者注:ヴェイトのアジト)からこっそりとエネルギー攻撃が行われる。

ヴェイトは死ぬ。その為にストーリーのテーマも焦点も失われる。

・シーモア(訳者注:ニューフロイティアンズ紙のぼんくら)がロールシャッハの日記を取り上げるシーンがある。原作ではぼかされていたのに、その効果がフイになってる。

・映画はMTVスタイルのカット多用、ぶつ切りの編集になる予定だった。

・上映時間は2時間ちょっとの予定だった。




スナイダー版

・舞台は1985年。

・ミニットメンはミニットメンと呼ばれている。クライムバスターズという呼称は出てこないが、ワーナーの要望によりスーパーヒーロー一般を揶揄する呼び方としてウォッチメンという言葉が使われる。

・モスマン、キャプテンメトロポリス、シルエット、フーデッド・ジャスティス、二人のバーニーその他の脇役が脚本に復活。

・原作にある、二人のバーニーの全てのシーンは撮影された。(訳者注:多分ディレクターズカットに入ると思われる)

・Tales of the Black Freighterはアニメーションとなり、ディレクターズカットに含まれる予定。(訳者注:このアニメ自体は既に米国で発売中。私は未見ですが。)

・サリー・ジュピターの暴行場面で助けに入るのはフーデッド・ジャスティス。

・新しい台詞は最小限に抑えられ、ほとんどのものは原作からそのまま採用された。

・コメディアンの葬儀でのフラッシュバック、火星でのフラッシュバック、ロールシャッハのセッション場面におけるフラッシュバック、全てが元通りになっている。

・ローリーは二代目シルク・スペクトラとなっており、スーパーパワーも持ってない。

エイリアンの代わりに、マンハッタンを装った偽装攻撃が行われる(変なナレーションはなし)、カルナックからエネルギー攻撃が発せられることはなく、攻撃は目標にテレポーテーションでやってきたかのような表現になる。映画版を観た人は、この結末のつけかたはエレガントで、エイリアンが登場する原作が目指していたものと同様の効果とテーマを保っていると言っている。

・オスターマンは白人。

・時系列は原作と同じ。

・ブバスティスが登場する。

ヴェイトは死なない。

・シーモアの手がロールシャッハの日記の上に来たところで映画は終わる(原作と同じ)

・古典的なゆったりとした、堅実なアプローチで監督されている。

・上映時間は2時間35分(訳者注:実際は2時間42分)。ディレクターズカットはおよそ4時間になる予定。

引用元: GeekSexy

なお、引用元のブログのソースが不明なので、100%真偽のほどは確認取れませんが、内容の一部はザック・スナイダーがインタビュー記事で話していた内容と合致しますので、そこそこ信頼性はあるかと思います。

あと、これは別ソース(てか監督のインタビュー)からですが、当初スタジオ側はPG-13にしたかった模様。変更後は当然R指定です。

ひょっとしたらなっていたかも知れない映画版ウォッチメン。ニクソンが三期目に突入するよりよっぽど怖い話ですな。いやホント、どこかの「なんとかボール エボリューション」みたいなことに成りかねなかったわけで。ザック・スナイダー万歳!




ネタバレついでですが、イカ問題補足。

こないだあるフォーラムを読んでいて知ったのですが、なんと映画版にもイカはきちんと出ています。えええ?そんなの観てないよ?という人はイカ、いや以下を反転してください。




オズマンディアスが、マンハッタンに見せかけた主要都市同時攻撃を行うために利用した装置。その正式名称は

Sub
Quantum
Unified
Intrinsic field
Device

と言います。

それぞれの頭文字をピックアップすると・・・、"SQUID"! イカ

やるなぁザック・スナイダー。ってお前は2ちゃんねらーか!(笑)

ちなみにこの場面は、映画の比較的最初のほう(マンハッタンがブラブラブラブラさせてるあたり)にちらっと写るので、注意力が必要です。






まぁね、ここまでザック・スナイダー監督が健闘しても、文句を言いたくなるのが原作ファンと言うものですが、彼の努力(と原作に対する愛情)には敬意を表しても良いのではないかと思います。

ではまた。

追記(3/28) 訳し漏れに気づいたので一部修正。



関連エントリ
Watchmenの感想 (長文注意)
・ウォッチメンに登場するスーパーヒーローの元ネタについて調べてみた。
【2009/03/21 15:19】 | 布教活動 | トラックバック(0) | コメント(5) | page top↑
Watchmenの感想 (長文注意)
というわけで書いてみる。

ウォッチメンてそもそも何?とかそういうことは説明しないで進めていきます。それでなくても長いので。

watchpeanuts

まず、ウォッチメンの映画版について語る前に、奇才テリー・ギリアムが2000年に受けたインタビュー記事を引用してみる。

“The problem with Watchmen is that it requires about five hours to tell the story properly, and by reducing it to a two or two-and-a-half hour film, it seemed to me to take away the essence of what Watchmen is about.”

<駄訳>
「ウォッチメン(を映画化する上で)の問題としては、ストーリーをきちんと語ろうとすると約5時間はかかってしまうということ。じゃあそれを2~2時間半の映画にしてしまうと、僕にはウォッチメンの本質というものが消え去ってしまうように思えるんだ」

続けて彼は言います。

“I was happy when I didn’t get the money to make it because I would have been embarrassed if we’d done it.”

<駄訳>
「これを作るためのお金が集められなくて良かったよ。もし作ってたら恥を掻くところだった。」

「未来世紀ブラジル」や「バロン」、「12モンキーズ」と言った、それこそ「よくもまぁこんな映像が作れるもんだ」の代表格のような存在である奇才テリー・ギリアムさえもがサジを投げたこのウォッチメン。

それを今回、監督のザック・スナイダーはどう映画に仕上げたか。

結論から先に言えば、2時間42分という長いけれども限られた時間で、見事な映画にしています。いやほんと、原作ファンなら絶対観るべき映画です。

そもそもこの原作、一般の人が想像する「アメリカンコミック」というものとは異なり、その構造は非常に複雑で、並みの小説なんか相手にならないくらい巧妙かつ精密に作られています。

メインストーリーもさることながら、それ以外の部分も見逃すことが出来ません。

例えば、作品中にしばしばコミック内コミックとして挿入される「Tales of the Black Freigther」というアメリカンコミック。

これは一見単なる海賊をテーマにしたストーリーに思えますが、これはその都度のメインストーリーの登場人物の心情とリンクしていたり、未来の出来事の暗示になったりして、メタフィクショナルな効果を挙げています。

また、各章の最後に引用される文献は、登場人物の自伝、過去と現在の新聞記事やインタビュー記事、果ては精神分析鑑定書なんかが出てきて、世界観に奥行きを与えています。

更には、何気ない会話に隠されたメッセージ、作品中いたるところに隠された暗示やシンボル。

原作者のアラン・ムーア自身がウォッチメンは5・6回繰り返して読めるように出来ていると言ってるくらいで、本当に凄まじい密度の情報が一冊の中に詰まってます。

これら無数の要素のうち、どれを残してどれを省くか、というのが今回の映画化の肝だと思うのですが、監督のザック・スナイダーは素晴らしい仕事をしていると言えます。

ストーリーの本筋を追うために必要な部分と、ファンが待ち望んでいる「ビッグスクリーン」で観たい!というシーンを上手いこと取り出して纏めた手腕は本当に絶賛されるべきだと思います。

って言うか、このエントリの冒頭で引用したテリー・ギリアムの発言が本気だとすれば、この点において、ザック・スナイダーはテリー・ギリアムを超えたと言っても過言では無いでしょう。

この映画、基本的には極限まで原作を忠実に再現しつつも、独自の構成も付け足されているのですが、基本的にその付け足しの部分がまた非常に良い効果を生み出しています。

その独自色が最も強く出ているのがオープニングクレジット。


opening

ストーリーの舞台となる1985年までの前日譚、つまりミニッツマンの黄金期とその衰退を紹介しつつ、スーパーヒーローがアメリカの歴史にどのように関連していたかを表現しています。

原作では様々なシーンで断片的に語られていたものをひとまとめにしつつ、原作には含まれていなかった、ケネディの暗殺、アポロの月面着陸と言った史実とスーパーヒーローとの関連についても触れ、5分ちょっとという短い時間で私達の歴史とは別の歴史を語り下ろすという荒業に挑んで成功しています。いや本当に良く出来たパートだと思いました。

本編に入ってからも、原作のひとコマひとコマをそのまま映画にしたというシーンが展開。台詞もかなりの部分が原作から取り入れられており、安心して観る事ができます。

役者陣の演技、というかキャラクターの再現度も素晴らしく、オズマンディアス一人を除いて全員がもうそのままコミックから抜け出してきたよう。

特にロールシャッハは本当に素晴らしい出来です。

いやもう、最初のシーンで初めてロールシャッハが言う「HURM」と言う呟きの見事さと言ったらもう、原作ファンには感激モノでしょう。

hurm

なんというか、原作モノの映画化でよくある、「ああこの人があのキャラクターなのね・・・ふーん。まあ良いんじゃない」というレベルではなく、「あー!ロールシャッハってこれが実物なんだ!」と思わせるくらいの出来です。

原作には無くて映画で付け足されたものとしては、残虐描写と大人向けの表現(←穏当な言い方)が増量されています。これは・・・正直どうなんでしょうか。

こないだ新聞を読んでたら監督のインタビューがあり、「グロ表現とかそこらへん、ちょっとやりすぎちゃった(笑)」みたいなことを言ってましたが、ええ本当にやりすぎだと思います。

私自身はそこらへんに全然アレルギーがないのですが、駄目な人は駄目かも。

これらのシーンだけで「ウォッチメン」に偏見を持つ人がいるかもしれないので、それが心配になりました。

あとは原作と映画版の最大の相違点と言われている、ラストの改変。俗に言う「イカ」問題について。

実は映画評論家の町山智浩さんが、ブログの中で原作と映画版の相違点についてエントリを挙げていて

1 イカが出ない 

 これは正解と思う。原作読んだ時はイカが出た途端にシラけた



と書かれているのですが、すみません。私はイカが出てこなくてがっかりしました。

いや、わかるんです。映画にしたら多分台無しになるシーンだと思いますし、限られた時間の中でイカのいきさつについて語るスペースはないでしょう。(実際、監督はもしイカを入れようとしたら15分余計に長くなっただろうと言ってます。)

ただ、原作ファンとしては、ザック・スナイダーがここまで特攻隊精神で原作に忠実に映画化するのであれば、是非とも観たかったです。イカ。

ちなみに、上述のエントリの中で、町山智浩さんは、ウォッチメンのプロットのネタ元の"The Atchitects of Fear”を映画版ではしっかり写していることに、監督の真摯なオタク魂を感じる、と仰ってます。

・・・が、であればこそ、"The Archtects of Fear"の着ぐるみに敬意を表するという意味でも、敢えてイカが欲しかった。

まぁ原作ファンというものはどうしても100%満足はしないものですからね。すみません。

あと原作には無くて当たり前なんですが、付け加えられて少し気になったのが、音楽の使い方。

とても上手く使ってるとこもあったのですが、ちょっとだけ違和感があったのが、墓地のシーンのとベトナム戦争のシーンで流れた曲。

監督の狙いも分かるんです。

多分「如何にも」という曲を使うことで、何と言うか異化効果を出そうとしたんでしょうけど、如何なものか・・・ってまだイカに拘りすぎですねごめんなさい。

その狙いは分かるものの、それでもちょっと座席からズリ落ちそうになりました。

原作から抜け落ちているシーンは他にも色々あります。ニューススタンドの親父とコミック読んでる餓鬼、いわゆる「2人のバーニー」の掛け合いや、ロールシャッハ(の中の人)を分析しようとすることで、悪影響を受けてしまう精神科医のくだりは今回の映画版では省かれています

個人的には、この「2人のバーニー」は原作の中でも特に好きなシーンだったので、なんらかの形で残して欲しかったのですが。。。。噂では4時間を越すと言われる、ディレクターズカット版の発売に期待しましょう。

思いつくまま色々書きましたが、原作ファンとしてはこれ以上望めないくらい素晴らしい映画化だったと思います。

くどいようですが、原作が好きな人だったら絶対に観るべき。

原作なんて知らないよ、と言う人はとにかく映画を見て、少しでもセンサーに触れるところがあれば、是非原作を読んでみてください。読まないのは人生を損しています。

そして、映画を観たけど長いだけで話も小難しいしなんか血とかドバドバ出てるし青い人はパンツも履かずに始終ブラブラさせてるし何この変な映画と思った人は・・・・えーと。

ではまた。
【2009/03/12 17:28】 | 布教活動 | トラックバック(0) | コメント(3) | page top↑
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