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常に勝者たれ、またはゲーミフィケーション子育ての勧め。
娘が4歳になる日も迫ってまいりました。正確に言うとまだ1ヶ月ありますが。

これぐらいの年になると、色々と生活習慣的なものも身に付けていただかなければいけません。

思えば3年と11ヶ月近く前、ホカホカの赤子として世に出てきた娘ですが、もうすっかり社会的動物としての存在感を増しております。

飲んだミルクを吐くんじゃないかとか、背中までウンコが漏れてんじゃないかとか心配していたはずが、いつの間にか友達とどうすれば上手く遊べるか/喧嘩できるかとか、そんなことに気を使ってる自分に気がつき、感慨深くなることもしばしばです。

とはいえ、そうは言ってもまだ3歳。外から帰ってきて手を洗うようにするとか、脱いだコートをきちんと掛けるとか、歯を磨くとか、そんな基本的なことを教えるのにもまだ苦労をしております。

そんな私達が最近使ってる方法というのは、ゲーミフィケーション的アプローチ。

・・・すみません。流行りの言葉を使いたかっただけで、実際は単純になんでも「ゲーム仕立て」にしてるだけです。

デイケアから家の敷地まで帰ってきたとき、階段を上るのを渋る娘。「ねぇーだっこー」などとごねてます。

そんな娘に一言、「よーし負けないぞー!」と言おうものなら、グズグズしていたのはどこへやら、

”I'm gonna be a winner!"

と掛け声も勇ましく、ダッシュで階段を駆け上がる娘。

遊びに夢中で、お風呂に入るのを嫌がる娘に一言、「よーし、今度こそ負けないぞ!」

”No I'll win! I'll win!"

オモチャを放り投げて、浴室へ向かう私の後ろを追いかけてきます。

ちょろいのう。

ただ唯一の問題は、娘が常に勝者でいたがるということ。

いやね、そりゃー誰でも勝ちたい。ただ教育上の観点から言うと、負けてこそ学べる教訓というものもございます。

No pain, No gainなんてもとはフィットネス器具のキャッチコピーが今じゃ企業研修なんかでも使われるフレーズになってるように、たまにはPainを感じて頂きたいものです。そしてGainして欲しい。

ということで、たまには私が勝とうとするのですが、勝ってしまったときの娘の狼狽の度合いが半端なものではありません。

崩れ落ちて号泣。

いまどきオリンピックでもここまで悔しがる人は見たことがないくらいに泣き喚きます。一体どこの将軍様が死んだのかと思うほど。

本来はしつけの一環+親の都合として始めてるはずが、ゲーム開始前よりも手に負えない状況になり、落ち着かせるのに時余計な時間がかかることもしばしば。面倒くせえ。

これが親のしてのPainであり、優れた親としての役割を全うするためにはここが頑張りどころな訳です。

と、そんなことは分かっていても、ついこちらの思うように娘を誘導したことで満足してしまい、勝ちを譲ってばかりするというのが現実。情けないですね。

日々の本当に細々したところで娘と「勝負」しているので、一体これまでどんな戦歴になってるのかは分かりませんが、多分勝負の99%くらいは私が負けております。

そんなある日のこと、娘が妻にこう言い放つのを聞いてしまいました。

Daddy is always loser...

いや、その表現はなんかひっかかるぞ。

そしてデイケアでも、迎えに行った私を見つけると、横にいた友達に笑顔で一言。

Hey Emily, my daddy is a loser!

娘の生活習慣のためと思っていたのに、いつの間にか娘の世界観に父親=負け犬という定義を埋め込んでしまったことに気づきました。

私の社会的動物としての地位が危うい。

ではまた。
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【2012/03/05 19:10】 | アメリカで育ててみる | トラックバック(0) | コメント(5) | page top↑
アメリカの高校に日本マンガの主人公が入学!?・・・「MANGAMAN」の感想
今日は育児ネタではなく、昨年末に読んだ本のご紹介。

タイトルは「MANGAMAN」そのまま、マンガマンと読みます。

カバー



作者はヤングアダルト小説を書いているBarry Lyga、作画は数多くのグラフィックノベルでイラストを担当しているColleen Doranです。

まずはあらすじのご紹介。




アメリカのどこにでもありそうな町、Castleton。

そこに住むMelissaは典型的なアメリカの女子高生。クイーンにも選ばれた、誰もが羨む町一番の美人だが、突然スポーツマンの彼氏と別れたり、変なコスチューム集めに没頭したり、最近の奇行は親友にも呆れられている。

友人ともに参加したパーティーでは、すっかり酔っ払った元彼がよりを戻そうと寄ってくるが、彼女にそんな気はない。

なんとか元彼を振り放したMelissaに、親友が駆け寄ってきた。

「彼よ!本当に彼が来たの!」

彼とは誰か?

実は、最近この町はあるニュースでもちきりだった

それは、政府の実験によって偶然異次元からやってきたという少年がこの町にやってきており、近々彼らの通う学校に入学してくるかもしれないということ。

しかもその少年がいたというのは、日本マンガのような二次元の世界だと言う。

その彼が、突然パーティーに姿を現したのだ。

Ryoko Kiriyaというのがその少年の名前。Ryokoという名前だが立派な男の子だ。

そのあまりに現実離れした容姿に衝撃を受ける人々。

このときから、平凡だったMelissaの人生は大きく変化していくことになる。

果たしてRyokoは元の世界に戻ることができるのか?

RyokoとMelissaの恋の行方は?

そして異次元から襲来する触手モンスターの正体とは?




・・・という話なのですが、アメリカの高校に、日本のマンガキャラクターが入学してきたらどうなるか?というのをメインのアイデアにおきながら、学園ドタバタラブコメSF的なフォーマットを踏襲しつつストーリーが進みます。

意欲作というか、異色作というか、何とも不思議な味わいの作品になってます。

なんと言ってもMangamanこと主人公、Ryoko Kiriyaの造形が凄い。

彼が第一章のラストで初登場するシーンのインパクトが半端ないです。

こんな感じ。

Mangaman登場

なんじゃああこりゃあああ!

少女マンガの歴史には詳しくありませんが、70年代から80年代くらいの少女マンガを思い起こさせる造形です。てか、いまどき気の利いた中学生だってもう少しまともなイラストを描くような気が。

ただ、出落ちとしてはある意味最高のインパクト。

ちなみに1コマ目でアップになってる、インチキ着物を着てるのがMelissaです。この世界の美人の基準がこれだと思って下さい。どれだけRyokoの見た目が異様なものか想像できるかと思います。

このビジュアルだけでなく、このRyoko君、日本マンガの世界からやってきたということで、いろいろ特徴があります。

その代表的なものが、デフォルメ、漫符、効果線などがそのまま出現してしまうというもの。

言葉で説明すると面倒なので、画像を見てもらいましょう。

RyokoがMelissaに出会い、一目ぼれするシーンです。

一目ぼれ

はい、1コマ面の左でなんか大変なことになってるのは、上の画像のRyokoと同一人物です。

そしてこれはこのコミックの世界の中では「本当にそういう風に見えてる」ということになってます。

周囲の人が軽くパニックになってるのはそういうことですなんですね。

また、3コマ目では効果線が物質化して、床に散らばってるのが確認できます。

効果線を掃除させられるおじさん。

なんで俺がこんなこと・・・。

他にも戦闘シーンではドラゴンボール風(?)になったり、

ドラゴンボール風

ラブシーンではページが花で埋まったりと、彼が登場するところ周囲の人の現実感覚は揺さぶられっぱなし。これらのトンデモシーンを見るだけでも一見の価値はあると思います。

・・・ただし、全体を通したストーリの感想はと言うと、正直なところちょっと残念な出来。

というのも、肝心の日本のマンガから出てきた、という最大の特徴がストーリーとしてあまり効果的に使われてないためです。

つまり上で述べたような、Ryokoが日本マンガの世界の住人だから起こしてしまうドタバタ、というのがそれほどストーリー展開に寄与していません。

繰り返し行われる「物質化する効果線」というギャグも、本当にただのギャグとして消費されるだけです(しかもそれほど面白くない)。

想像を越える展開、というのがあまりなく、最終的には打ち切り漫画の最終回みたいな駆け足&予定調和のラストを向かえ「なんか幸せそうだから良いけど、いろいろ腑に落ちないぞ」という感想を読者に残して話は終了します。

いや、実は中盤に一瞬、凄く盛り上がるシーンがあります。

RyokoがMelissaに対して世界の秘密について教えるというもの。

作中、Ryokoはとある方法でMelissaが住んでいる現実世界もまた一つの漫画(グラフィックノベル)であると知らせます。

自分もフィクションの登場人物の一人であると知り、驚愕するMelissa。

もし、そこから彼らがフィクションの中の登場人物としての自覚を持って、メタフィクションについての話になったりしたら…どうですか?なんかワクワクしませんか?

しかし、残念ながらMelissaちゃんにはちょっと荷が重かったのか、はたまたページ数の都合だかしりませんが、「えええ!そうなの!びっくり!」くらいなもので、ほぼスルーして自分達の色恋に関心が戻ってしまいます。

うーむ。なんかもったいない。

作者の狙いというのを勝手に想像するに、多分日本のマンガうんぬんというのは本質ではなく、Ryoko Kiriyaという、どうしたって現実世界に馴染めことが出来ないキャラクターを使って、現実の周囲に馴染めていない十代の葛藤を描こうとしているのだろうな、というのは理解できます。

実はヒロインであるMelissaがまさに同じ葛藤を感じており、だからこそお互い惹かれるわけですし。

ただその場合、上で述べたような、中盤に出てくるメタフィクショナルな展開というのがどこまで必要だったかというのが疑問ですし、彼らが抱える悩みを解消するようなカタルシスというのも不十分だと思います。

作者が提示した風呂敷の広さを考えるに、この設定のきちんと活かすにはあと100Pくらいはボリュームが必要だったのではないかな、と思います。まぁこんなこと言っても仕方がありませんが。

あと作画を担当したColleen Doran、グラフィックノベルの世界では大変名の知れた人のようなのですが、この方の描く「ジャパニーズコミック」の部分が大変微妙な出来です。いろいろ研究して努力している部分も見て取れますし、わざとバランスを崩して描いてるなとか、日本風にデフォルメしようとしてるのは分かるのですが、それにしても強烈。

なによりRyokoが住んでいたという日本マンガの世界自体が、「全然面白そうに見えない」というのが致命的かと。

Ryokoの居た日本マンガの世界

文化祭

なんだこれ。

・・・おっと、今知りましたが、彼女はアメリカ人向けマンガの描き方の教科書も書いてるそうで・・・うーむむむ。そうなんだ。色々と残念です。

いっそ日本の漫画家にその部分だけ書いてもらったほうが対比として分かりやすかったんじゃないか。

ただし、そうすると今度は私が読んだときに感じたようなトンデモ感というものが薄まってしまうので、そこらへんが難しいところでしょうか。

なんか文句ばっかり書いてますが、全然面白くなかったかというとそうではなく、Ryokoの元カノの設定やMelissaとのラブシーンにおける「日本風修正」の入ったイラストなんかは思わず爆笑してしまいました。これは是非原作を手にとって見て欲しいところです。

作者のBarry Lygaはコミックの原作を手がけたのは今回が初めてだったそうですが、かなり年季の入ったの日米マンガのファンらしく、このMangamanも長年暖めていたアイデアとのこと。

果たして作者がまたグラフィックノベルの原作を手がけるのかどうかは分かりませんが、もし次回作があるようであれば見てみたい気もします。

・・・とここまで書いたところで、驚きのニュースを読みました。なんとこの作品、Young Adult Library Services Associationという団体が選んだ、2011年度のティーン代向けのベストグラフィックノベルの一作として受賞したそうです。

ちなみに同リストにはあだち充の「クロスゲーム」や鬼頭 莫宏の「ぼくらの」なんて名だたる名作に肩を並べています。

おお!これはもう、Mangamanも翻訳して日本で出版するべきではないでしょうか!?

・・・ないな。

ではまた。
【2012/02/10 19:37】 | 読書関連 | トラックバック(0) | コメント(2) | page top↑
お誕生日には呼びません。
最近は娘をデイケアからピックアップするのが私の仕事。

車でほんの10分足らずの道のりだけれど、その間は父と娘だけのコミュニケーションタイム。

特に双子が生まれてからは、なかなか長女のケメの相手をしてやれない身としては貴重な時間です。

後部座席のチャイルドシートに縛り付けられた娘と、運転席に座る私。基本的に相手の顔を見ないで会話が行われるのだけれど、それもなんだか新鮮。

歌を歌ったり、周囲の景色に反応する娘のコメントに笑ったり、それなりに楽しい時間。

少し前まではちょっとしたことで会話内容が不明瞭となり、良くわからなくなっていたが、娘ももう4歳の誕生日が見えてきて、立派に会話ができるようになった。

先日のこと。

デイケアを出発してしばらく後、私が聞いてもいないのに、娘がデイケアでの出来事を話し始めた。

「今日ね。ケメちゃんデイケアで泣いちゃった」

「あらあら。一体何があったの?」

デイケアで娘が泣くことなんて日常茶飯事なのだろうが、あらためて娘からそう言われるととても気になる。

「エイミーが "You can't come to my birthday party!"て言ったの」

エイミーはケメと仲の良いお友達。ベストフレンドは誰?と聞いたら、ベスト5くらいには入る。

以前も書いた気がするが、この「私のお誕生日パーティーに呼んであげないから!」というのは、この年頃の子供達にとって最大の罵り言葉らしい。さすがにアメリカだからって3歳児がFワードは言わんわな。

「それでケメ、エンエンて泣いちゃったの。そしたらミズ マンディ(先生)がエイミーにNo!って言って、エイミーがI'm sorryって言ったの」

「そうか。じゃあ仲直りしたんだね?」

「でもケメはThat's OKって言わなかったの。それでエイミーも泣いたの」

日本でもきっと「ごめんなさい」「いいよ」と言うのが幼児間における平和協定の合言葉だと思うが、こちらでも"I'm sorry" "That's ok"というのがその合図。

先生もきっと娘に許すよう促したに違いないが、それを言わなかったはどういうことだろう。

「ケメはなんでThat's OKって言ってあげなかったの?エイミー謝ったんでしょう?」

「でも。ケメはとてもとてもSadだったから。言いたくなかったの」

ふーむ。マナーとしてはよろしくない。そこは当然エイミーを許してあげるべき。

だが、なんだか親としては、普段友達に対してそんなに強く出ない娘が、そんな意地を張ったことに何だか成長を感じてしまう。たまには自我を通すのも良いかもなんて思ったり。親馬鹿ですね。

「でもケメ、明日エイミーにもう良いよ、って言わなきゃね。エイミーはきちんとSorryって言ったんだから」と、とりあえず親としての務めを果たそうとしたところで、ちょっと気になることがあった。

「・・・なぁ、なんで最初にエイミーはケメを誕生日パーティーに呼ばないなんて言ったの?」

娘が言う。

「ケメがね、エイミーはお家に一杯オモチャないでしょうって言ったの」

・・・お前が悪いんじゃん!

娘のちょっとした精神的成長を喜ぶどころか、余計な攻撃性を発揮していること驚き、ハンドルを握る手が危うくなった夜でした。

ではまた。
【2012/02/03 19:19】 | アメリカで育ててみる | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
10月19日にあったこと。
もし万が一死んだ時はどうしようか、という話もしていた。

アメリカでもっとも数多く行われる外科手術、とは言え何があるかは分からない。

「身体から取り出されるのが、内臓の一部か子供かの違いしかないわ」

というのは、その日あるナースが口にした言葉。言われてみればそうかもしれない。リスクは少ないと言われていたとはいえ、
万が一ということもある。

軽い口調で妻が言う「私が死んだら」というフレーズを聞くたびに、できるだけ無表情を保ちながらも少しだけ胃の底が重くなった。

約10ヶ月の間に信じられないくらい大きくなった妻のお腹は、まるで服の下にバスケットボールを入れた泥棒見習いのようだった。

最後まで自然分娩を希望していたが、双子の上に一人が逆子では選択の余地は無い。

妻の手術は午後5時からの予定。

前日の夜から絶食させられていた妻だったが、手術に向けて不安と緊張と興奮ですこしハイになっていた。

妻を車に乗せ、病院に3時30分に到着。

待合室ではこれが最後のチャンス、とばかりに、これまで散々嫌がっていた妻の妊婦姿をカメラで撮ったりしながらも、もうひとつ現実感が伴わない。

俺が双子の親に?三人の子持ち?まさか。

娘のケメと同じ産院、以前と同じ作りの病室に入り、妻は手術着に着替える。

心音を計るセンサーがついたゴムバンドを二本巻き、心音のチェック。

一人の心音はすぐに分かったが、もう一人がなかなか見つからない。これかな?と思ったら一人目と同じ心音だった、なんてことが繰り返され、結局20分近くかかって2人分の心音が確認された。

ナースが注射器を持って入室。「今から点滴だけど、動脈は持ってきた?」

ジョークのつもりだろうが、あんまり面白くない。ひきつった笑顔で返す。アハハ。ナイスジョーク。

時間は刻々と過ぎ、絶食中の妻を目の前に私はオレンジジュースをゴクゴクと飲み、気づけば午後4時過ぎ。

立会うことになる私は、ナースから無菌服を渡され、四苦八苦しながら身につける。以前、食品工場を見学したときと同じ格好だな、などと場違いなことを考えながら。

担当医がやってきた。

同じ病院なので、そのままだったら前回の麺男医師が担当するはずだったが、今回の妊娠ではあえて違う先生に担当してもらっていた。今回の先生は評判が非常に高い人気のある先生。

余談だが、前回の出産は麺男先生だったというたび、ナースがみな「あー・・・あの先生ね。・・・今度の先生のほうが素晴らしいわよ!」と言うのが面白かった。いや面白くないか。

実際、今回の先生は非常に素晴らしく、細かい気配りとどこまでも質問に答えてくれる態度など、麺男医師で感じた不満や不安が一切なかった。
こういうのは2回出産を経験しないと分からない。

担当の先生が笑顔で妻に聞く。「昼食はどうだった?」

「えー?・・・絶食・・・ですよね?」

「ひっかけ質問だよ!ハハハー!」

さっきのナースと言い、きっと緊張をほぐしてくれようとしてるのだろうな。笑えないけども。

さまざまな手続きをこなすうち、予定時刻寸前。

点滴台を引き連れて、ついでに私も引き連れて、医師と妻は手術室に向かった。

てっきりベッドに寝かされたままいくのかと思いきや、徒歩で行くのね。なんか変な感じで。

手術室は思った以上に広く、そしてまぶしかった。蛍光灯の白々とした光が室内を隈なく照らしていて、全てがなんだか映画のセットのような、
本当にここで手術するのだろうかと思うくらい嘘っぽい感じさえした。

手術台の上に横たえられ、麻酔を打たれる妻。私は妻の足元らへんに待機するように言われ、馬鹿みたいに突っ立っていた。

ちなみに妻は限りなく全裸に近い状態。大きいお腹に予防接種のときに塗られたような黄色の液体をグルングルンと塗りたくられている。

妻のあまりに無防備な様子にすこしかわいそうになる。なんというか、銭湯でのぼせた人が見当違いな手当てをされてる感じとでもいうのか。

テレビの出産シーンで見るような、妻の視界と手術部位を挟む衝立らしきものはない。これで手術ってのはなんつーかその、本当?ちょっと心配になってきた。

激しく居心地の悪い私に気がついたのか、ようやく医師の一人が丸椅子を持ってきてくれた。椅子は妻の頭の左側。よしよし。それっぽくなってきた。

丸椅子に腰かけた私に妻が言った。

「ちょっと!顔色悪いけど、大丈夫?」

「え?大丈夫だよ」

「本当に本当に大丈夫?倒れたりしないでね。本当に顔色悪いから」

主観的には大丈夫なつもりだが、そんなに顔色が悪いのだろうか。意識ははっきりしているんだけど。

すっかり麻酔が効いている妻。お腹の辺りでは既に医師とナースが忙しく動き回っているが、私たち二人には何が行われているのかさっぱりわからない。

「いよいよだね」

「なんかまだ実感が湧かない」

そんな会話を続ける私達。

衝立はないものの、私の座っている位置からは、手術する部位はほとんど見えない。いや思いっきり背筋を伸ばせは見えるのだろうが、そんな勇気は無い。

と、視線を手術室の奥に向けると、妻の寝ているベッドの足元側、天井近くに斜めにかかった鏡があるのを発見。そこには小さくだが、しっかりと妻の黄色く染まったお腹が映ってるではないか。

遠くにあるので意識さえしなければ視界に入ってくることはなさそうだが、これは気をつけなければ。

「ねぇ、今何してるのかな?」

妻の問いかけに、少しだけ頭を持ち上げ、あんまり見えない、でも少し見える、くらいの角度で医師の手元を盗み見る私。

「んー。なんか手に持ってあなたのお腹にチョイチョイ書いてるみたいけど、切るところを決めてるんじゃないかな?」

「ああそう」

ふと先ほどの鏡に目をやる。

もう切ってた。

続いて何かが焦げる臭い。歯医者で嗅ぐ、あの鼻の奥が苦くなるような、ゴムの焼けるような臭い。

遠くの鏡に映るのは何かが赤かったりピンクだったり白かったり。

うわわわわ。

「あああ。もう切ってる切ってる切ってる」

「え?ぜんぜん分かんない」

そうなのか。麻酔ってすげえ。当たり前だけど。

出産中のはずなのに、私達夫婦も延々と雑談している。意識的にか生まれてくる子供のことは触れない。なんだろうこのノンビリした感じは。

ナース達と言葉を交わしながら、忙しく手を動かしていた担当医の言葉がふと耳に入ってきた。

「オーマイガッ」

「え?いまオーマイガって言わなかった?」ちょっと心配そうに妻が聞く。

慌てて彼らの会話の続きに耳を傾ける私。妻の位置からは良く聞こえないらしい。

どうやら医師がこの間自分の身に起こった面白エピソードをナースに話していたらしく、その中の台詞としての「オーマイガ」だったらしい。

・・・本当にリラックスしている。さすがというか。目の前の手術とは全然関係ない雑談が続いている様子にほっとするやら。

しばらくたってから、今度は担当医が私に声をかけた。

「ここらへんだから。いいね?」

血がついた手で空中にクルリと円を描く医師。

「え?何がですか?」

「子供をここに抱えあげるから。その場所からこういう感じで写真を撮ると、きっと良い写真になると思うよ」

さすがベテラン先生。細かすぎる心配りありがとうございます。

チラチラと鏡を見る私。相変わらずピンクと言うか白と言うか赤と言うか。コリアンバーベキューというか。

突然、鏡と私の間の空間に、ちょっと驚くくらい透明な液体が大量に吹き出した。

とうとう子宮を開いたらしい。バキューム音とともにナースが羊水を吸い、妻の頭の近くにあったガラスの器にドドド、と溜まっていく。おおこんなところに容器があったとは。

妻が向こう側をみたら思いっきり目の前に羊水が見えるが、言わないでおこう。

おーおーおー、すっごい勢いで溜まっていくピンク色の液体。

そしてその数分後、まるで手品のように、医師の両手に支えられ、一人目が誕生。

先ほど医師が円を描いた、まさにその空間を埋めるように赤子が出てきた。

まー頭の形の綺麗なこと!さすが帝王切開!それがカメラを向けながら私が思った最初のこと。

私が写真を撮ったのを確認すると、赤子はナースに渡され、新生児用ベッドに運ばれる。

丸椅子から初めて立ち上がり、ナースを追いかけて、赤子の写真を撮り続ける私。

「二人目だよ!」

今となっては妻が言ったのか、医師が言ったのかは分からないが、あわてて丸椅子に戻り再度写真を撮る私。さっきの繰り返し。違うのは赤子の性別のみ。

次にあっちで身体を拭かれてる男の子を撮ったら、こっち体重を量られてる女の子を撮って。そうだパウンドだけじゃなくてキロでも表示してもらうようにナースに頼まなきゃ。二人同じベッドに寝かした写真も撮らないと。一応携帯でも撮っておこう。そうだ妻は大丈夫か。

二人分の写真をできるだけ公平に沢山撮ろうとする私には、双子の父になった感動とか感激とか感慨よりも、はたまた無事に出産をこなした妻への感謝の気持ちよりも、忙しいレストランにいきなり配属されたウェイターみたいな気持ちの方が大きかった。

「はい男の子抱っこして」「はいつぎ女の子」「じゃあ次二人とも抱いてみる?」「写真とってあげようか?」

両腕に乗せられた双子の重さと温かさ、彼らがくるまれたタオルの香りを嗅ぎながら私が思ったこと。

「双子か・・・。な・・・なんだか大変なことになった気がする」

遅いよ。


twins


その後、アメリカの出産の通例どおり、妻は48時間で退院。

太いホチキスで留められた傷口は、これから私達が迎えるてんやわんやの3ヶ月を思ってニヤニヤするチェシャ猫のよう。

チェシャ猫


というわけで、我が家が5人家族になった日のお話でした。

ではまた。
【2012/01/25 02:30】 | アメリカで産んでみる | トラックバック(1) | コメント(8) | page top↑
聖域の守りかた、または本当に悪い狼とは。
子供が出来て以来、私がほぼ唯一、プライバシーを楽しめる場所と言うのはトイレ。

幸い、狭い我が家ですがトイレだけは二つあり、ゲスト用のトイレは私専用になってます。

余談になるので詳しくは書きませんが、私は腸に難があるタイプなので、トイレでは出来る限り長時間、かつリラックスして入る必要があります。

そんな私にとって、占有できるトイレの存在と言うのはありがたい。

ところが娘が生まれたことで、そんな聖域すら脅かされ始めました、というのは以前のエントリで書いたとおり。

せめてもの対策として、なるべく娘の世話をしているときにはトイレに行かないようにしていますが、こればっかりはコントロールできないもので、どうしようもないときというのがあります。

娘に気づかれようものなら、もう大変。

ドアの前で「ダーーーーディーーー!何してるのーーー!」(ドンドン)←ドアをたたく音

なぜ40近くにもなって、自分の排泄行為を報告せねばならぬのだ、と思いながら私は答えます。

「プ・・・プープーだよー!」

ちなみにプープーというのは大の方。

「ダディ、プープーしてるの?」

「そーだよー!だから向こうで待っててー!」

「見ーせーて!」

そんなもん見てどうすんだ。

「え?いやだよ!勘弁してください!」

ガチャガチャガチャガチャ!

親の願いを完全に無視して、ノブを回す娘。

そう、以前の娘はノブに手は届いても、まわすことは出来ませんでした。今は余裕で回せます。

最初に開けられたときには、娘の成長を喜ぶ余裕も無く「いぃやああああ!」などとか弱い女学生のような悲鳴をあげてしまったものです。

でももう大丈夫。

その事件以降、トイレに入るときには忘れず鍵をしめるようになった私。ガチャガチャと大きな音を立てるドアノブに落ち着かない気分になっても、開けられる心配はありません。

「ダーディー!!」ガチャガチャガチャ!

言うことを聞かない父親に苛立つ娘。

プライバシーの重要さを理解し、尊重するというのは3歳児の娘にとってはちょっとまだ荷が重いようです。

「ダーディー!Open the Door!

なぜか英語に切り替えて叫ぶ。しかも命令形かよ。あなたのお父さんは気が弱いノンネイティブなんだから、英語で命令されたらつい開けてしまいそうになるではないか。

「ケメ!お・・・お母さんのとこ行ってなさい!」

なるべく威厳を込めた言い方をしたつもりですが、ズボン下ろして便座に据わった状態で言ってもなんだか締まらない。

ガチャガチャガチャ!ドンドンドン!激しく揺れるドアノブ。父親の命令などどこ吹く風。

開かないとは分かっていても、こんなに騒々しいと肝心の排泄行為に集中できません。

いっそ一回用便を断念して、爆弾を抱えつつ娘の相手をしようかしら・・・とか考え始めたとき、状況に変化が訪れました。

「リルピグ リルピグ レッミー カミン!ハフアンパフ・・・ハウスダウン!・・・・チミーチンチン!」

ん?

先ほどまでの単純な命令口調だったのが、なにやら長文のセンテンスを叫んでいます。

ドアを叩くのもやめ、同じセンテンスが繰り返される。何かの呪文?

よく耳をすませてみると、娘はこう言ってました。

Little pig Little pig. Let me come in!

(子豚よ子豚、私を入れろ!)

・・・or I'll huff and I'll puff and I'll blow your house down!

(さもないと家を吹き飛ばしてしまうぞ!)

おお!これはひょっとして「三匹の子豚!」

そうです。業を煮やしたのか単純に飽きたのか、娘はいつの間にか一人芝居モードに入ってた模様。

立てこもる子豚に対して脅しをかける狼の役になりきってます。

ちなみに「三匹の子豚」、我が家では教えてなかったのですが、たぶんデイケアで習ったのでしょう。見事に暗誦しています。

娘の思わぬ知識の披露に、先ほどまでの苛立ちも忘れ、つい喜んでしまいます。

よくよく聞いてみると、娘は狼のパートを大声で叫ぶだけでなく、それに対する子豚の答えおよび状況説明は小声で言うという繰り返しをしています。

ワラ、木の枝、ブロックの順に子豚は次の家に逃げ込み、それをまた狼が吹き飛ばす。

私がドアを開けない以上、延々と物語はループしています。

ああ良かった。とりあえず娘がロールプレイングに夢中な間に、なんとか排泄を済ませてしまおう。

I'll huff and I'll puff and I'll blow your house down!

「はっはっはー!大丈夫だもんねー!You can't come in my brick house, Big bad wolf!

ドンドンガチャガチャされなくなった私のほうもそんな軽口を聞く余裕が出来てきました。本当は物語通りの返答をするべきなのでしょうが、あいにく原作を知らないのでそこらへんは適当です。

Little pig Little pig. Let me come in!

「はっはっはー!You can't eat me!

「・・・・・・」

おっと返答がなくなった。いつまで経っても進まない話に飽きたのでしょう。所詮は3歳児。

じゃあお気に入りの本でも開いて、もう少しラグジュアリーな時間をひとり楽しむとしましょうか。

と、トイレに積んである本を取り、読み始めた瞬間。

チャ・・・カチャカチャ。

なにやら扉の向こうで音がします。

「ん?ケメ?」

問いかけにも反応せず。かすかに続く金属音。カチャカチャ・・・チャ・・・・カチャ。

「おいケメ?何やってのかな?もしもーし。オオカミさーん?Big bad wolf?

ガチャ!バタン!

突然ドアの鍵がグルンと回転すると、開くはずのない扉が凄い勢いで開きました。向こう側には満面の笑みでこちらを見つめる娘の顔が。

「うわあああああぁ!どうして!?」悲鳴を上げる私。

娘の右手にはなにやら黄色いプラスチックの玩具が握られています。それは子供用ねんどのセットについて来たスコップの親戚みたいな奴。

我が家のトイレの鍵は、日本でも良く見る、コインなどで簡単に開く形のもの。娘はその玩具を使って、鍵をこじ開けたのです。

娘がいったいどうやってその鍵のメカニズムを理解し、かつ開錠に最適なツールを玩具箱から取り出してきたのは不明。もちろんそんなことを教えた覚えはありません。

てか、狼がピッキングの技術を持ってるなんて、そんな「三匹の子豚」は聞いたことがない。ひどい!

「ケメ!やめて!閉めて!」

父親があげる情けない叫びも、勝利を祝う心地よい音楽にでも聴こえるのか、娘は全く意に介しません。

「ダディー・・・プープーしてるのー?見せてー!」

「ひぃぃぃぃ・・・・」

というわけで、我が家に残った唯一の聖域も失われてしまいました、という酷い話でした。

ではまた。



<証拠写真>
証拠写真
【2011/09/14 03:34】 | アメリカで育ててみる | トラックバック(0) | コメント(10) | page top↑
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